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第3回 | 毎日ビデオジャーナリズムラボ

第5期(2019年4-9月)

第3回:2019年06月16日

ゲスト講座:聴く力〜被写体との距離感〜

高橋智史さん
フォトジャーナリスト
フォトジャーナリスト。1981年秋田県秋田市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。 大学在学中の2003年からカンボジアを中心に東南アジアの社会問題の取材を開始。2007年4月からカンボジアの首都プノンペンに居を移し、カンボジアの社会問題や生活、文化、歴史を集中的に取材。現在は、政府と開発業者が結びついた土地の強制収用問題を始めとしたカンボジアの人権問題に焦点を当て、権力の横暴に命をかけて立ち向かう人々の切望を記録し、Cambodia Daily、CNBC、The Guardianなどの英字メディアを中心に取材写真が掲載されている。昨年でカンボジア取材通算15年目を迎え、最新の写真集「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」を発表し、第38回「土門拳賞」を受賞した。 主な受賞歴に、2014年「名取洋之助写真賞」、2016年「三木淳賞奨励賞」、2019年「土門拳賞」がある。著作に、写真集、「湖上の命‐カンボジア・トンレサップの人々‐」(窓社)、フォトルポルタージュ「素顔のカンボジア」(秋田魁新報社)、「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」(秋田魁新報社)がある。

ワークショップ:インタビューの基礎

  • 「インタビュー撮影の注意点」レクチャー
  • 最後の動画制作「私の伝えたい現場 –1人の視点から見る-」に向けてのストーリーピッチ
    (課題:撮影する現場についてのリサーチ・ストーリーピッチの準備)

レポート

第5期毎日ビデオジャーナリズムラボ第3回講座は、フォトジャーナリストの高橋智史さんをお迎えしました。テーマは、「聴く力〜被写体との距離感〜」です。第38回土門拳賞を受賞されたばかりの高橋さんは、独裁化が進むカンボジアで15年に渡り、政府に弾圧される市民と共に発信を続けてきました。現地でどのように関係性を作り、市民の皆さんの声を受け取って来られたのか、じっくりお話を伺いました。

「絶対的な権力の構造の中に生まれ、平等の世界には生きられないカンボジアの人々。そういう状況に立った時、私はやはり弱い側に追いやられた人の側に立ちたい。その願いを伝えるために、彼らに近づき、思いを聞き、ともに苦しみながら撮影し、関係を構築していく。だから、私はなるべく望遠レンズは使いません。自分も現場の中に入って、人々の苦しみ、悲しみ、叫びを心で本当に強く感じて切り取るからこそ、伝えられる写真が撮れる。それが、私が思う『フォトジャーナリスト』としての姿。命をかけた人がそこにいるのに、自分が安全なところに立ってそこから切り取るというのは、自分の心が許さない」と高橋さん。

取材をする前には必ず、『分かち合いの時間』を設けると言います。

「なるべく緊張感や距離感を与えないように心がけます。伝えさせていただきたい人、こういう話が聞きたいという方がいたら、まず電話で連絡を取って、『分かち合いの時間』を必ず1回、多くて3回取る。カメラは持っていきません。『こういう願いで伝えたい』と伝え相互理解ができないと、うまく取材できない。まずは温かい思いやりを注がなければならない。撮影はその次」。

受講生からは、「カンボジアでの現状が自分の認識していたものと違っていてびっくりしました。ポルポト政権から解放されて若い人々で楽しく暮らしていると思っていたのですが、独裁が進んでいるとは思ってもみなかったです」「距離感を知るために相手を知る、会話が大事であることを知りました」「(インタビューの)テクニック以外に、距離感などマインド面も高橋さんの話から学ぶことができた」などの感想が聞かれました。

講座後半は、「インタビューの基礎」についてのレクチャーと実践を行いました。レクチャーでは、「インタビュー撮影の注意点」として、「インタビュー前にできる限りのリサーチをすること」、「五感で現場を感じること」、「Fact is Fact. それ以上にもそれ以下にもしないこと」などを解説しました。特に「Fact is Fact. 」の部分では、レギュラー講師の下村健一さんから、「意外なことだったとしても、そこに真実がある。自分の先入観にとらわれないで。そして、一つ盛ると、それ以外の情報も持っているのではと信頼が崩れてしまうことになる」とアドバイスがありました。

また、実践では、インタビュー練習を兼ねたストーリーピッチを行いました。受講生の皆さんは、講座最終回での動画作品発表会に向けていよいよ準備を始めています。作品のテーマは、「私の伝えたい現場 –1人の視点から見る-」。今回の講座では、受講生一人ひとりが考えてきたアイデアを発表し、それについてインタビューし合い、実際に撮影に入る前のアイデアのブラッシュアップを行いました。それぞれに「私だから伝えられる」現場を見つけた受講生。9月の発表会に向けて、自問自答が続く試行錯誤の制作期間が始まります!

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